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Oniga(オニガ)
この温厚な私がこれほど怒るとは(笑)
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ノンスモーキング、と答えると、入って右側の部屋へ通される。19時半男がやってきて、メニューは毎日変わると説明。じゃぁ前菜の盛り合わせ“ヴェネツィアの味”と“海の味”を一つずつ、カッペ・トンデという小さな赤貝のようなあさりのような貝のスパゲティと、魚のグリル盛り合わせを、と頼む。前菜はまんなかにほかほかの練りたてのポレンタ、その回りに、バッカラ・マンテカートやイワシのイン・サオール、そのほかなんだかよくわからないすり身や小魚のマリネが盛られている。“ヴェネツィア”も“海”も大体同じだけど、ヴェネツィアにはイカのスミ煮がついている。どれも新鮮で悪くない。海次第でメニューが変わる、と自慢げに言っていた19時半男も悪い人株がやや下がる。それにしても、どうみても、ダルマツィア系だよね、あの顔は、アルバニアとかユーゴとか、とひそひそ話す。
お次は貝のスパゲティと魚のグリル。貝はちっちゃく、そして少ない。魚はヒラメ、ボラ、あとはイサキのようなのとサバのような魚。似ているけど違うような…。これは何ですか?と聞く。自信たっぷりに19時半男が答えて曰く、ボラを指差してサバ、イサキもどきを指差してタイ。えぇ、どう見ても、これはボラだよ、この黒っぽい灰色のうろこ、それにイサキってタイに似てる?違うと思う、というと、なにおぅ、とばかりに向こうは、僕は海の街で生まれ育ったんだ、だから、絶対間違いない、といきり立つ。まぁまぁ、それを言うなら、こっちは魚の国からやってきたんだよ、魚には悪いけどうるさいからね、と思うけど、そこまできつくは言わない。いやぁこれはボラだと思うよ、と答える。19時半男は絶対に譲らない。まぁいいや。ボラサバでも。しかし、食べ続けることはなかった。魚の焼き方がどうもうまくないのである。身もなんだかしまりがない上に、火の通し方が中途半端。弱火なんだな。弱火でじっくりやってもパサつくだけだから、これは焼き直しを頼んでもダメだろうな、ということで残す。ほとんど残した皿を見て、19時半男がどうしたのか、と聞く。いやぁ火の入り加減があまり気に入らなかった、と正直にいえば、焼き直そう、という答える。いや、(さっき思った理由で)もういいんです、お腹もいっぱいだし、といって断る。でも、向こうはしつこく焼き直す焼き直すという。だから、正直に、同じような火だったらいくら焼いても美味しくならないからいい、と言ってしまう。相手がしつこく強情であるということを忘れて。あぁいわなきゃよかった。彼は自分がいかに魚を、魚料理をよく知っているかを説明する。そうね、そうかもしれない、確かにあなたはブラーヴォだろう、でも、私には合わなかったんです、ミ・ディスピアーチェ。
食後のグラッパを飲み干し、お勘定を頼もうと思うが、19時半男は近くのイタリア人テーブルにはりついてまた熱く語っていてなかなかスキを見せてくれない。他のカメリエーレがいればその人に頼めるんだけど、誰もいないから仕方ない。立って、レジへ直接払いに行く。日本式に。めったにしないけど、急いでいる時は構わない。すると、レジにいた男の人は、だまって勘定をし、金額を書いた紙を投げてよこしたのである。もう感じ悪いのはこの店全体か!とムカムカする。気がついたら、もう口にしていた。お宅は客に何もいわず、レシートを投げてよこすのか、と。それまで黙っていた(じつはぼーっとしていたらしい)彼は、はっとはじかれたように(スイッチがオンになったように)、いや、普通はテーブルでチェックするから、と口籠る。そう、普通はね。でも、今回は普通じゃなかったんだよ、と答え、店を出る。テーブルでお会計しないのは野蛮人のやることだから、どう扱ってもいい、ということ?そうじゃないでしょう、ひとこと、どうしてテーブルでお会計しないんですか?と聞くべきでしょう。そう言いたかったけど、もう口をきくのもいやになっていたので、そのまま出てきてしまった。あぁあ、某女性誌に紹介されていた“ガイドブックに載っていない”店、2軒に行って、2軒ともケチがついてしまった。やっぱり写真に惑わされてはいけない。
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