●ヴェネツィアは好きな街である。出かけた回数もミラノ、パレルモと同じくらい多いので、例によって裏道をぐるぐるあてどなく歩く機会が何度もあった。右も左もわからずにぐるぐる歩き回ってた頃は「こんな街、絶対に道を覚えられない」と思ったものだけれど、何度も裏道歩きをしてると自然と体に地理感覚が刻み込まれてきた。
●こうなってくると自然と店の持ちネタも増えてきて、「今度はあそこに行こう」「そういえばまだあの店には行って無いな」と毎度毎度決まったテーマで作戦を立てるのが下手すると実際に店で飲み食いするよりも楽しくなってくる。アームチェアー・トラベラーここにあり。旅の前の情報収集の時間こそが旅をより輝かしくする。旅はすでにその瞬間から始まっているのである。
●ヴェネツィアの街歩きが楽しいのは「バーカロ」という立ち飲みも可能なオステリア文化が残っているからで、あっちで一杯、こっちで一杯、ついでに軽いつまみを、という立ち飲み歩き文化があるのはイタリアでもヴェネツィア&ヴェネト州以外にはあまり無い。もちろんどんな街のBARでも立って飲むことは可能なのだが、酒にあう一口サイズの小皿つまみ「チケーティ」が充実しているのは他の街ではあまり見られない。
●バーカロは基本的に地元ご用達しの店が多いが、逆に当たり外れが多いのがいわゆる普通のリストランテ&トラットリア。ヴェネツィアは観光都市だけにいきあたりばったりで美味しい店に出会うのは本当に難しい。バーカロならば入って気に入らなければ次の店を探せばいいが、レストランの場合一度着席したらそうはいかない。事前の情報収集、アームチェアー・トラベリングが本当に必要なのはヴェネツィアである。
●しかも街は迷路そのもの。見知らぬ路地を歩いてひたすら歩いていい加減いやになり始めた頃、目的の店を見つけた時の喜びは何ものにも変えられない。こうした修練を重ねて裏道歩きの段位を上げていっても別になんの役にも立たないんだけど、30過ぎた男が夢中になれる数少ないことのひとつ、と自分にいい聞かせ(もちろん女性が夢中になってもいいんですけど)またしても新たな出会いを探してヴェネツィアの裏道を歩き続けるのである。
Last updated on Tuesday, March 11, 2008 |