ゴルドーニ広場からアルノ川を越えて二本目を左。さえないパブだなぁと常々思っていた所が、久しぶりに通ったらちょっと小奇麗になってどうやら経営が変わったらしい。ビステッカの名店「P」に我々を導いてくれたM姉が「ワイン関係者に評判がいいから行きましょうよ」と誘ってくれたので出かけてみた。通りからはガラス扉と窓を通して店内が手にとるようにはっきりわかる。どうやら客層は地元民から旅行者まで適度に入り交じっているようだ。
壁際のベンチシートにつく。木のベンチが壁に沿ってぐるりと店を囲んでいる。これは昔のパブの頃から。ばりばりの居抜きだ。でも、中身は明らかに違う。ワインリストもそこそこ充実しているし(トスカーナもの中心)、料理メニューのバリエーションも結構揃っている。さらに、サービスのカメリエーラやワインを説明するお兄ちゃんも明るく親身だ。旅行者にとっては何よりの接客ぶり。
前菜にトスカーナのサラミとハムのまな板を頼む。まな板(タッリエレ)に盛り合わせでのってくるからこう呼ぶ。これをつまみながら以降のオーダーを練ろうという算段だ。さすがAB型のM姉、メニューを決めるにもじっくりと時間をかける御自分をよく御存知で。ワインはトスカーナのあまり重くなく値段も重くないもので私達が知らないものを、と件のお兄ちゃんに尋ねる。キャンティ地区だけれどキャンティではない、しかし悪くないものがありますよ、と見知らぬ外国風の名前の赤を持ってきてくれる。確かに悪くないし、値段も15ユーロほどとリーズナブル。記念日でもない普段のおしゃべりご飯にはちょうどいいタイプ。こういうやりとりそのものがその後の食事の成否にもかかってくるものである。
パスタも肉料理も食べたいが、オムレツの文字についふらふら、と。M姉と相談し、前菜もう一品、温かいものを追加ということでオムレツを、その後、それぞれ好きなものを二皿ずつ取ろうではないか、と合意。先のまな板とオムレツはシェアで、その後は自分の皿を抱え込む、というパターンである。イタリアのオムレツはフリッタータという名前で呼ばれるが、これは普通フライパン全面に流した具入りの卵をそのままじっくり焼いて、返して裏も焼いて、丸いまま皿上にすべらせるというもの。ここのは片面を焼いた後、返し焼く代わりに真ん中から二つ折りして皿に移した、オムレツ初心者方式である。味は...オムレツ以外の何ものでもありません。
その後食べた牛肉のタルタルもピーラーで薄くスライスした野菜がたっぷり添えられていて、一皿のバランスを考慮してあったり、全体的にどれをとってもワインのつまみになるように計算してあるらしい。シェアすることにまったく抵抗を感じさせない、食べながら飲みたい人間には居心地いい店である。
●店データ Via Santo Spirito,64/66r 日曜休 Tel055-211264
2003年11月
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